養育期間標準報酬月額特例は、3歳未満の子を養育中に標準報酬月額が下がった場合、将来の厚生年金額を養育前の高い標準報酬月額で計算できるようにする申出です。現役の被保険者は事業主経由、退職者は本人が提出します。

養育期間標準報酬月額特例の概要

対象、効果、期間、提出経路の要点です。
確認項目内容
対象者3歳未満の子を養育する厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方
主な条件養育期間中の各月の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額を下回ること
効果将来の厚生年金額を計算するとき、対象月について養育前のより高い標準報酬月額を用います
対象期間の大枠3歳未満の子の養育開始月から、その子の3歳の誕生日がある月の前月まで
現役の被保険者本人が申し出、事業主を経由して提出します
退職者事業主を経由せず、本人が直接提出できます
遡及できる期間申出日の前月までの2年間
提出先日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所
提出方法電子申請、郵送、窓口持参
出典:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」(確認日:2026年7月28日)日本年金機構・2026-07-28確認

対象になる条件

申出書を作る前に、次の条件を確認します。

  • 養育している子が3歳未満である
  • 申出者が厚生年金保険の被保険者、または対象期間中に被保険者だった
  • 養育期間中の標準報酬月額が、養育開始月の前月の標準報酬月額より低い月がある
  • 養育開始月の前月に被保険者でなかった場合、その月より前1年以内に厚生年金保険の被保険者期間がある
  • 申出日の前月まで2年を超えて遡る月を含めていない
  • 対象期間中に複数の事業所で勤務していた場合、事業所ごとの被保険者期間を整理している

必要書類と省略できる条件

通常必要な書類と、添付を省略できる主な条件です。
書類必要になる場面省略・代替の主な条件
養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届申出時に必須現行様式を日本年金機構の届書ページで確認します
戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書申出者と子の身分関係の証明。コピー不可事業主が原本等で関係を確認して「確認済み」にチェックする場合、または日本の戸籍がある申出者と子の個人番号を両方記載する場合は不要です
住民票の写し子の生年月日と、対象日に申出者・子が同居していたことの証明。提出日前90日以内、コピー不可申出者と子の個人番号を両方記載する場合は不要です
身元・番号確認書類退職者が事業主を経由せず、マイナンバーを記載して提出する場合窓口はマイナンバーカードの提示、郵送は表裏両面のコピーなどを使用します
事件係属証明書等特別養子縁組の監護期間中の子を養育する場合子の個人番号を記載した場合、住民票の写しを省略できることがあります
措置決定通知書養子縁組里親に委託されている要保護児童を養育する場合戸籍関係書類と住民票の写しに代えて提出します

育児休業の終了をきっかけに申出する場合、同居確認用の住民票は、育児休業終了日の翌日が属する月の初日以後に発行されたものが必要です。発行日と対象日の関係を確認してから取得してください。

出典:日本年金機構「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」「6-7:養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を受けようとするとき」(確認日:2026年7月28日)日本年金機構・2026-07-28確認

記入前に用意する情報

申出者、子、勤務先、養育期間の情報をそろえてから記入します。

  • 事業所整理記号と被保険者整理番号
  • 申出者の住所・氏名・電話番号
  • 申出者の個人番号または基礎年金番号
  • 申出者の生年月日・性別
  • 養育する子の氏名・生年月日・個人番号
  • 同じ子について過去に養育特例を申し出たことがあるか
  • 養育開始月の前月に勤務していた事業所
  • 子を実際に養育し始めた日
  • 養育特例を開始する日
  • 対象期間中に勤務した事業所と被保険者期間
  • 事業主が戸籍謄(抄)本等で続柄を確認するか

養育期間標準報酬月額特例申出書の書き方

申出者欄に住所、氏名、電話番号、申出日を記入します。現役の被保険者は事業主へ提出する日、退職者が直接提出する場合は日本年金機構へ提出する日を確認します。

共通記載欄へ被保険者整理番号、個人番号または基礎年金番号、氏名、生年月日、性別、養育する子の氏名・生年月日・個人番号を記入します。

「A.申出」欄で、同じ子について初めての申出か、現在の事業所と養育開始月の前月に勤務していた事業所が同じかを選びます。異なる場合は、当時の事業所情報を記入します。

養育開始年月日には、申出に係る子を実際に養育し始めた日を記入します。養育特例開始年月日は、資格取得日、育児休業等終了日の翌日、産前産後休業終了日の翌日など、該当する開始事由に応じて記入します。

事業主が戸籍謄(抄)本等で申出者と子の身分関係を確認した場合は、事業主続柄確認欄の「確認済み」にチェックします。添付省略の条件と整合しているか確認してください。

申出書と必要書類をそろえ、現役の被保険者は事業主経由、退職者は本人から、電子申請・郵送・窓口持参のいずれかで提出します。

間違いやすい欄の意味を整理します。
記入内容注意点
申出者欄特例を申し出る被保険者または元被保険者の住所・氏名等事業主の情報を書く欄ではありません
被保険者整理番号資格取得時に事業所単位で付された整理番号基礎年金番号と取り違えないようにします
個人番号/基礎年金番号本人確認後にいずれかを記入基礎年金番号は10桁を左詰めで記入します
過去の申出の確認同じ子について初めての申出かを選択以前に受理された申出がある場合は「いいえ」です
事業所の確認現在の事業所と養育開始月の前月の事業所が同じかを選択当時被保険者でなかった場合は、前1年以内の直近の事業所を確認します
養育開始年月日子を実際に養育し始めた日養育特例開始年月日とは一致しない場合があります
養育特例開始年月日制度上、特例を始める日育児休業等終了の場合は終了日の翌日です
事業主続柄確認事業主が戸籍謄(抄)本等で続柄を確認した場合にチェックチェックにより戸籍関係書類を省略できる場合があります
出典:日本年金機構「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届(記入例)」(確認日:2026年7月28日)日本年金機構・2026-07-28確認

提出方法と提出先

在職中か退職後かで提出経路が異なります。
申出者の状況提出者提出先・方法
現在も被保険者として勤務している被保険者の申出を受けた事業主事務センターまたは管轄年金事務所へ、電子申請・郵送・窓口持参
対象期間に勤務していた事業所をすでに退職している元被保険者本人事務センターまたは管轄年金事務所へ、郵送・窓口持参など日本年金機構の案内に沿って直接提出
対象期間に複数の事業所で勤務した各事業所の被保険者期間ごとに申出書を作成勤務していた事業所ごとに提出経路を確認

育児休業等終了時報酬月額変更届との違い

復職後に標準報酬月額が下がる場合は、2つの手続きを分けて確認します。
比較項目養育期間標準報酬月額特例申出書育児休業等終了時報酬月額変更届
目的将来の厚生年金額を養育前の高い標準報酬月額で計算できるようにする復職後の報酬に合わせて、現在の保険料計算に使う標準報酬月額を改定する
対象の中心3歳未満の子を養育し、標準報酬月額が養育前より下がった被保険者等育児休業等の終了日に3歳未満の子を養育し、復職後の報酬で改定条件を満たす被保険者
効果年金額計算上の標準報酬月額をみなします4か月目から実際の標準報酬月額を改定します
主な書類養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届育児休業等終了時報酬月額変更届
両方の関係一方を提出しても、もう一方の申出は完了しません標準報酬月額が下がる場合は養育期間特例も別に確認します

終了届が必要な場合

同じ様式の「B.終了」欄を使う場面と、提出不要の場面です。
終了の状況終了届
申出に係る子を養育しなくなった必要です
申出に係る子が亡くなった必要です
申出に係る子が3歳になった不要です
退職等により厚生年金保険の被保険者資格を喪失した不要です
別の子について養育特例を受け始める不要です
申出者が産前産後休業または育児休業等を開始した不要です

特例が終了した後、同じ子について再び特例の対象になった場合は、改めて申出書を提出します。この場合、戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書は不要とされています。

提出前に確認したい間違いやすい点

返戻や対象期間の誤りを防ぐため、次の点を確認します。

  • 養育開始年月日と養育特例開始年月日を同じ意味だと考えている
  • 育児休業等終了時報酬月額変更届を出せば養育期間特例も自動で適用されると考えている
  • 養育開始月の前月に加入していないのに、前1年以内の被保険者期間を確認していない
  • 戸籍謄(抄)本や住民票のコピーを添付している
  • 住民票が提出日前90日以内に発行されたものか確認していない
  • 育児休業終了を起点にする住民票の発行日を確認していない
  • 個人番号を記載しただけで、退職者本人の身元・番号確認書類も不要だと考えている
  • 対象期間中に複数の事業所で勤務したのに、1枚だけで済ませている
  • 申出日の前月から2年を超える期間も遡れると考えている
  • 終了届が必要な場合と不要な場合を取り違えている

提出前チェックリスト

提出前に、対象、書類、記入欄、提出経路を確認します。

  • 子が3歳未満で、養育期間中の標準報酬月額が養育前より下がっている
  • 養育開始月の前月、または前1年以内の直近の標準報酬月額を確認した
  • 申出日の前月まで2年間の範囲で対象月を整理した
  • 申出者と子の身分関係を証明する方法を決めた
  • 同居確認用の住民票が必要か、個人番号記載で省略できるか確認した
  • 養育開始年月日と養育特例開始年月日を区別した
  • 現役の被保険者は事業主経由、退職者は本人提出であることを確認した
  • 複数事業所の被保険者期間がある場合は事業所ごとに申出書を用意した
  • 日本年金機構の現行届書と記入例を確認した
  • 育児休業等終了時報酬月額変更届も必要か別に確認した

よくある質問

養育期間標準報酬月額特例申出書はいつまでに出しますか?

日本年金機構の案内に一律の「何日以内」という期限はありません。ただし、遡及できるのは申出日の前月まで2年間です。対象になったら事業主または年金事務所へ早めに確認してください。

育児休業等終了時報酬月額変更届を出せば、この特例も自動で適用されますか?

自動では適用されません。復職後の標準報酬月額を改定する届書とは別に、将来の厚生年金額を保護する養育期間特例の申出が必要です。

戸籍謄本や住民票は必ず添付しますか?

必ずではありません。事業主が戸籍謄(抄)本等で続柄を確認してチェックした場合や、申出者と子の個人番号を両方記載した場合は、省略できる書類があります。省略条件は書類ごとに異なります。

すでに退職していても申出できますか?

対象期間中に厚生年金保険の被保険者だった方は、退職後に本人から直接提出できます。申出日の前月まで2年間の遡及範囲と、本人確認書類を確認してください。

いったん特例が終わった後、同じ子で再申出できますか?

はい。再び対象になった場合は、改めて申出書を提出します。この再申出では、戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書は不要とされています。

次にすること

標準報酬月額が下がった月と養育開始月の前月の標準報酬月額を確認し、申出日の前月まで2年間の対象月を整理してください。現役の被保険者は勤務先の総務・人事、退職者は管轄年金事務所へ提出経路と必要書類を確認します。復職後の標準報酬月額を改定する必要がある場合は、育児休業等終了時報酬月額変更届も別に確認してください。

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