令和8年度税制改正では、2026年分の所得税から基礎控除と給与所得控除が引き上げられます。給与収入だけで他の所得がない一般的な低所得層では、基礎控除104万円と給与所得控除74万円により、所得税の課税最低限は178万円です。2026年11月までの月々の源泉徴収は変わらず、原則として12月の年末調整で新しい控除を反映します。

出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認

改正は成立済み|いつから適用されるか

所得税法等の一部を改正する法律は2026年3月31日に成立・公布されました。基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正は、原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。

令和8年度税制改正のうち、給与所得者に関係する主な日付を整理します。
日付・期間取扱い
2026年3月31日所得税法等の一部を改正する法律が成立・公布
2026年1月から11月の給与従来どおり令和8年分源泉徴収税額表で計算し、月々の源泉徴収事務は変更なし
2026年12月1日基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件に関する改正を施行
2026年12月の年末調整改正後の控除額と給与所得の計算表で2026年分の年税額を計算し、月々の源泉徴収税額と精算
2027年1月1日以後に支払う給与改正後の令和9年分源泉徴収税額表を使用
出典:財務省「第221回国会における財務省関連法律」、国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(確認日:2026年7月26日)財務省・国税庁・2026-07-26確認

主な変更点は3つ

2026年分・2027年分の所得税に関係する主な改正を、改正前と比較します。
項目改正前2026年分・2027年分主な影響
基礎控除:合計所得金額489万円以下所得帯により68万円から95万円104万円合計所得金額の区分により控除額の増加幅が異なります
基礎控除:合計所得金額489万円超655万円以下63万円67万円4万円引上げ
基礎控除:合計所得金額655万円超2,350万円以下58万円62万円4万円引上げ
給与所得控除の最低保障額65万円74万円2026年分・2027年分は特例を含む金額です
扶養親族・同一生計配偶者などの所得要件合計所得金額58万円以下合計所得金額62万円以下給与収入だけの場合の目安は123万円以下から136万円以下へ変更

表の「合計所得金額」は、給与の額面年収そのものではありません。給与所得者は給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を計算し、給与以外の所得があれば合算します。個別の基礎控除額は、本人の合計所得金額で確認してください。

出典:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」1~2ページ、財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(確認日:2026年7月26日)国税庁・財務省・2026-07-26確認

「178万円の壁」とは何か

財務省は、所得税の課税最低限を178万円まで特例的に引き上げると説明しています。給与収入だけで、給与所得控除の最低保障額が適用され、基礎控除以外に税額へ影響する所得や条件がない一般的なケースでは、給与所得控除74万円と基礎控除104万円の合計が178万円になるためです。

給与収入だけの一般的なケースで、178万円を構成する控除額を示します。
内訳金額
給与所得控除の最低保障額74万円
基礎控除104万円
合計178万円
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」、国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(確認日:2026年7月26日)財務省・国税庁・2026-07-26確認

扶養・配偶者・勤労学生の給与収入目安も変わる

給与所得控除と扶養親族等の所得要件が変わるため、給与収入だけの場合の年収目安も引き上げられます。次の表は、給与以外の所得がなく、給与所得者の特定支出控除を受けない場合の目安です。

2026年分・2027年分における扶養親族等の所得要件と、給与収入だけの場合の目安です。
区分合計所得金額の要件給与収入だけの場合の目安改正前の給与収入目安
扶養親族・同一生計配偶者・ひとり親の生計を一にする子62万円以下136万円以下123万円以下
特定親族62万円超123万円以下136万円超197万円以下123万円超188万円以下
配偶者特別控除の対象となる配偶者62万円超133万円以下136万円超207万円以下123万円超201万5,999円以下
勤労学生89万円以下163万円以下150万円以下

所得税の扶養要件に新しく該当しても、健康保険の被扶養者認定や勤務先の家族手当が自動的に変更されるわけではありません。加入している健康保険や勤務先の規程を別に確認してください。

出典:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」2ページ(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認

給与所得者が2026年の年末調整で行うこと

本人の2026年中の給与収入と、給与以外の所得の見込みを確認します。基礎控除額は合計所得金額により異なります。

配偶者や扶養親族に給与収入などがある場合は、2026年分の改正後の給与所得控除を使って合計所得金額の見込みを確認します。

勤務先から案内された令和8年分の基礎控除申告書などに、改正後の所得見積額と控除額を記載して提出します。

改正により新たに扶養控除等の対象となる親族がいる場合は、異動内容を記載した扶養控除等(異動)申告書を勤務先へ提出します。

年末調整後の給与明細と源泉徴収票で精算結果を確認します。改正だけを理由に必ず還付になるわけではありません。

出典:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q1-2、Q2-1~Q3-1(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認

年末調整担当者の確認事項

総務・給与担当者が2026年末から2027年初めに確認する項目です。

  • 2026年11月までの給与は令和8年分源泉徴収税額表で処理する
  • 改正後の令和8年分年末調整関係書類を従業員へ案内する
  • 改正により新たに扶養控除等の対象となる親族がいないか従業員に再確認を促す
  • 2026年12月の年末調整では改正後の基礎控除額と給与所得の計算表を使う
  • 2027年1月1日以後に支払う給与は、改正後の令和9年分源泉徴収税額表へ切り替える
  • 年末調整の過不足税額を給与明細や源泉徴収簿へ正しく反映する

2026年分の扶養控除等申告書の記載事項自体に変更はありません。ただし、改正で新しく扶養控除等の対象になる親族がいる場合は、従業員から異動申告を受ける必要があります。

出典:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q2-1、Q3-1、Q4-1(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認

確定申告が必要になる主な場合

2026年12月1日以後の年末調整で改正後の控除が適用された給与所得者は、この改正の適用だけを目的とした確定申告は原則不要です。一方、年末調整で改正後の控除が反映されなかった場合は、確定申告を確認します。

改正後の控除を受けるために確定申告が必要となることがある主な例です。

  • 2026年の途中で退職し、その後に年末調整を受けていない
  • 2026年11月30日以前に最後の給与を受けて年末調整が終わり、改正後の控除が適用されていない
  • 2026年中に死亡退職した方について、11月30日以前の年末調整では改正後の控除が適用されていない
  • 海外転勤などで非居住者となり、11月30日以前に居住者としての最後の給与と年末調整を受けた
  • 休業・休職中で2026年末までに復職せず、11月30日以前の給与で年末調整が行われた
出典:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」Q1-3、Q7-1(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認

注意点・よくある間違い

改正の適用時期と範囲について、次の点を混同しないようにしてください。

  • 基礎控除104万円は全員一律ではない:本人の合計所得金額と年分で控除額が異なります。
  • 年収178万円以下ならすべての税・保険料がかからないわけではない:178万円は所得税の課税最低限を説明する数字です。
  • 2026年の月々の源泉徴収額が改正成立直後から変わるわけではない:原則として12月の年末調整で精算します。
  • 令和8年分源泉徴収税額表を年の途中で新しい表へ差し替えるわけではない:2027年1月以後の給与から令和9年分の新しい税額表を使います。
  • 給与収入の目安だけで扶養を決めない:給与以外の所得がある場合は合計所得金額で判定します。
  • 所得税の扶養要件と社会保険の扶養要件を同じと考えない:加入先の健康保険や勤務先の案内を別に確認します。

よくある質問

2026年の手取りはいつから変わりますか?

月々の源泉徴収事務は2026年11月まで変更されません。多くの給与所得者は2026年12月の年末調整で改正後の控除が反映されます。2027年1月以後の給与からは、改正後の令和9年分源泉徴収税額表を使用します。

会社員は確定申告が必要ですか?

2026年12月1日以後の年末調整で改正後の控除が適用されていれば、この改正のためだけに確定申告する必要は原則ありません。年の途中で退職して年末調整を受けていない場合などは、確定申告を確認してください。

2026年分は家族の給与収入がいくらまで扶養控除の対象ですか?

扶養親族などは合計所得金額62万円以下が要件です。給与収入だけで特定支出控除を受けない場合の目安は136万円以下です。年齢や親族関係、生計など他の要件も確認してください。

基礎控除104万円と178万円の壁は今後も同じですか?

同じとは限りません。104万円の基礎控除と74万円の給与所得控除の最低保障額は、所得区分などの条件を満たす2026年分・2027年分の取扱いです。2028年分以後は控除額の仕組みが変わるため、対象年の公式情報を確認してください。

公式情報と確認日

国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」(確認日:2026年7月26日)国税庁・2026-07-26確認財務省「令和8年度税制改正の大綱の概要」(確認日:2026年7月26日)財務省・2026-07-26確認

次にすること

給与所得者は、本人と家族の2026年中の所得見込みを確認し、勤務先から年末調整の案内が届いたら令和8年分の申告書を提出してください。総務・給与担当者は、2026年12月の年末調整で使う改正後の計算表と申告書、2027年1月以後に使う令和9年分源泉徴収税額表の公開状況を国税庁で確認し、給与計算の切替日を整理してください。