国民年金の納付猶予は、20歳以上50歳未満の学生でない方が、本人と配偶者の所得要件を満たした場合に、申請・承認によって保険料の納付を猶予できる制度です。世帯主の所得は審査しませんが、猶予期間は追納しない限り老齢基礎年金額に反映されません。

納付猶予制度と保険料免除の違い

納付猶予と保険料免除は、どちらも未納のまま放置することを避けるための申請制度ですが、所得を審査する人と、老齢基礎年金額への反映が異なります。

納付猶予は本人・配偶者の所得を審査し、世帯主所得は対象外です。猶予期間は受給資格期間に算入されますが、追納しないと老齢基礎年金額には反映されません。全額免除は本人・配偶者・世帯主を審査し、承認期間の一部が年金額に反映されます。未納は受給資格期間にも年金額にも反映されません。
区分主な所得審査受給資格期間老齢基礎年金額への反映
納付猶予本人・配偶者。世帯主は審査対象外算入される追納しない限り反映されない
全額免除本人・配偶者・世帯主算入される全額納付時の2分の1が反映される
未納審査なし算入されない反映されない

対象者:20歳以上50歳未満で学生ではない方

納付猶予の主な対象条件は、20歳以上50歳未満、学生ではない、国民年金保険料の納付が難しい、本人と配偶者の所得が基準以下であることです。

  • 20歳以上50歳未満の期間である
  • 国民年金第1号被保険者である
  • 学生ではない
  • 本人の所得が基準以下である
  • 配偶者がいる場合は、配偶者の所得も基準以下である

所得基準は本人と配偶者で判定する

納付猶予の所得基準は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」です。扶養親族等がいない場合の基準は所得67万円です。障害者、寡婦、ひとり親などに該当する場合は基準が異なるため、申請時に市区町村または年金事務所へ確認します。

制度の対象、所得基準、免除との違いは、日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」に基づいています。

申請できる期間は2年1か月前までが目安

保険料の納付期限から2年を経過していない月について、申請時点から2年1か月前までさかのぼって申請できます。ただし、遅れるほど申請できる月が減り、障害基礎年金・遺族基礎年金の保険料要件で不利益が生じる場合があるため、早めの申請が重要です。

納付猶予の年度は7月から翌年6月です。令和8年度分は2026年7月分から2027年6月分で、2025年中の所得を審査します。過去分は各月の申請期限を確認します。
申請対象期間審査する所得
令和8年度分2026年7月分~2027年6月分2025年中所得
過去分各月の納付期限から2年を経過する前まで申請年度に対応する前年所得

申請可能期間と年度ごとの審査所得は、日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」で確認しています。

申請に必要なもの

紙申請では申請書と基礎年金番号またはマイナンバーの確認書類を準備します。失業等の特例を使う場合は追加書類が必要です。

  • 国民年金保険料免除・納付猶予申請書
  • 基礎年金番号通知書、年金手帳など基礎年金番号を確認できる書類
  • マイナンバーで紙申請する場合は、マイナンバーカード、または個人番号確認書類と本人確認書類
  • 失業等の特例を申請する場合は、離職票、雇用保険受給資格者証、雇用保険受給資格通知などの写し

所得証明書は原則として添付不要です。ただし、審査対象となる本人や配偶者の税申告が行われていない場合は、市区町村民税の申告を済ませてから申請する必要があります。

申請方法:マイナポータル・窓口・郵送

年齢、学生区分、国民年金の加入状況、本人と配偶者の所得を確認します。失業・倒産・事業廃止等の特例を使う場合は、その事実を確認できる書類も準備します。

マイナポータル、住所地の市区町村の国民年金担当窓口、最寄りの年金事務所への窓口提出または郵送から申請方法を選びます。

マイナポータルでは「保険料の免除・納付猶予、または学生納付特例」から「学生でない」を選びます。マイナンバーカードと、利用者証明用電子証明書パスワード・券面事項入力補助用暗証番号の各数字4桁を準備します。

紙申請では申請年度を確認し、必要事項を記入して提出します。申請書1枚で申請できるのは7月から翌年6月までの1年度分なので、複数年度を申請する場合は年度ごとに用意します。

審査後の決定通知を確認します。申請中でも納付案内が届く場合があるため、申請済みであることと審査状況を確認し、自己判断で放置しないようにします。

承認後は追納しないと年金額に反映されない

納付猶予の承認期間は受給資格期間に算入されますが、老齢基礎年金額には反映されません。10年以内の追納で年金額を満額に近づけられます。

  • 老齢基礎年金を受けるための受給資格期間に算入される
  • 一定の要件を満たす場合、障害基礎年金・遺族基礎年金の保険料要件の対象期間になる
  • 追納しない限り、老齢基礎年金額には反映されない
  • 追納が承認された月の前10年以内の期間を追納できる
  • 承認期間の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると加算額が上乗せされる

申請前のチェックポイント

学生制度との取り違え、配偶者所得の見落とし、年収と所得の混同、申請年度の誤り、申請の先延ばしを避けます。

  • 学生なら学生納付特例を確認した
  • 別世帯の配偶者を含め、配偶者の所得を確認した
  • 額面年収ではなく所得で基準を確認した
  • 紙申請では7月から翌年6月の年度ごとに申請書を用意した
  • 2年1か月前まで申請できることを理由に先延ばししていない

よくある質問

世帯主の所得が高くても納付猶予を申請できますか?

納付猶予では世帯主の所得は審査対象外です。ただし、本人と配偶者の所得は審査されます。保険料免除は世帯主の所得も審査するため、制度を取り違えないようにしてください。

50歳になった後も納付猶予を使えますか?

納付猶予は50歳未満の期間が対象です。50歳以上の月について保険料の納付が難しい場合は、保険料免除制度の所得要件や特例を確認してください。

過去分はいつまで申請できますか?

各月の保険料の納付期限から2年を経過する前までです。目安として申請時点から2年1か月前までさかのぼれますが、月ごとに期限が到来するため、早めに申請してください。

承認された保険料は後で必ず払う必要がありますか?

納付猶予の承認期間を直ちに支払う必要はありません。ただし、追納しない限り老齢基礎年金額に反映されません。追納は原則として10年以内に申し込みます。

次にすること

まず、申請する月が50歳未満の期間か、学生ではないか、本人と配偶者の所得が基準内かを確認してください。条件に該当しそうなら、マイナポータルで電子申請するか、日本年金機構の現行申請書を用意し、市区町村または年金事務所へ早めに提出します。