年金の繰下げ受給は、老齢基礎年金・老齢厚生年金を65歳で受け取らず、原則66歳以後75歳まで開始を遅らせる制度です。1か月遅らせるごとに0.7%増え、増額率は生涯変わりません。

年金の繰下げ受給の基本ルール

2026年7月28日時点の全国共通の原則です。古い生年月日や受給権発生日には上限年齢の例外があります。
確認項目原則
対象となる年金老齢基礎年金、老齢厚生年金
受給を開始できる時期原則66歳以後75歳まで
増額率65歳に達した月から繰下げ申出月の前月まで、1か月につき0.7%
最大増額率75歳で84.0%
増額の期間受給開始後、生涯変わりません
別々の選択老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げ可能
繰下げできない年金特別支給の老齢厚生年金には繰下げ制度がありません

66歳から75歳までの増額率

増額率は月単位で計算されます。整数年齢ちょうどで請求する場合の早見表は次のとおりです。

65歳時点の年金額に対する繰下げ増額率です。実際の年金額は年金記録や在職状況などで異なります。
請求時の年齢増額率
66歳8.4%
67歳16.8%
68歳25.2%
69歳33.6%
70歳42.0%
71歳50.4%
72歳58.8%
73歳67.2%
74歳75.6%
75歳84.0%

増額されるもの・増額されないもの

繰下げで増額される範囲を分けて確認します。
項目繰下げ時の扱い
老齢基礎年金原則として繰下げ月数に応じて増額
老齢厚生年金原則として繰下げ月数に応じて増額
加給年金額増額の対象外。繰下げ待機中も受け取れません
振替加算額増額の対象外。繰下げ待機中も受け取れません
在職老齢年金で支給停止となる部分繰下げ増額の対象になりません
特別支給の老齢厚生年金繰下げ制度がないため、受給開始年齢に達したら請求を確認します

繰下げ前に確認したい対象外・制限

次に当てはまる場合は、一般的な早見表だけで判断せず、日本年金機構や共済組合等へ確認します。

  • 65歳から66歳までの間に障害給付や遺族給付を受け取る権利があると、繰下げを申し出られない場合があります
  • 66歳以後の待機中に遺族年金など他の公的年金の受給権を得ると、その時点で増額率が固定される場合があります
  • 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金を受けられる場合は、老齢厚生年金を同時に繰り下げる必要があります
  • すでに共済組合等の老齢厚生年金を受給している場合は、日本年金機構分だけを新たに繰り下げられない場合があります
  • 厚生年金基金・企業年金連合会の年金がある場合は、老齢厚生年金とあわせて繰下げになることがあります
  • 75歳を過ぎて請求しても、原則として75歳を超える期間分の増額率は付きません
  • 繰下げ待機中に亡くなった場合、遺族が本人に代わって繰下げ請求をすることはできません
  • 繰下げにより、年金生活者支援給付金、医療・介護保険料や自己負担、税金へ影響する場合があります

65歳で請求しなかった後も選択肢があります

65歳時点で年金を請求せずに待った場合でも、実際の請求時に繰下げを申し出ず、65歳時点の本来の年金をさかのぼって請求できる場合があります。また、70歳到達後に本来の年金をさかのぼって受け取る場合、要件を満たせば請求の5年前に繰下げ申出があったものとみなす「特例的な繰下げみなし増額制度」が適用されることがあります。

ねんきんネットで受給開始年齢を比較する方法

75歳未満の方は、ねんきんネットの「将来の年金額を試算する」で、受給開始年齢を変えた見込額を比較できます。一般的な増額率だけでなく、自分の年金記録を反映した試算を確認するのが実用的です。

ねんきんネットへログインし、「将来の年金額を試算する」を開きます。現在の条件を前提に確認するだけなら「かんたん試算」、受給開始年齢を変えるなら「詳細な条件で試算」を選びます。

「受給開始年齢の設定を変更する」から、老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給パターン、受給開始年齢を設定します。両方を同じ年齢にする場合と、別々に開始する場合を比較します。

就業を続ける予定がある方は、今後の加入制度、収入見込額、就業見込期間も入力します。在職老齢年金による支給停止部分は繰下げ増額の対象外となるため、就労条件を含めて確認します。

複数の試算結果を保存し、65歳開始、70歳開始、基礎年金だけ繰下げる場合などを比較します。加給年金・振替加算、他の公的年金、税・保険料への影響は試算結果だけで判断せず、必要に応じて年金事務所へ確認します。

よくある質問

老齢基礎年金だけ、または老齢厚生年金だけを繰り下げられますか?

はい。例えば老齢厚生年金を65歳から受け取り、老齢基礎年金だけを70歳まで繰り下げる選択ができます。ただし、共済組合等から複数の老齢厚生年金を受けられる場合は、老齢厚生年金を同時に繰り下げる必要があります。

繰下げの最大増額率は何%ですか?

原則は75歳まで繰り下げた84.0%です。昭和27年4月1日以前生まれの方など、上限が70歳で最大42%となる方もいます。

加給年金も0.7%ずつ増えますか?

増えません。加給年金額と振替加算額は増額対象外です。また、年金本体を繰り下げて待っている期間中は、これらの加算を受け取れません。

75歳を過ぎて請求すると、さらに増えますか?

原則として増えません。65歳時点で受給権がある方が75歳到達月を過ぎて請求しても、増額率は75歳時点の84%までです。古い生年月日等で上限70歳となる方は70歳までです。

公式情報の確認日

この記事は、日本年金機構の「年金の繰下げ受給」「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」「『ねんきんネット』による年金見込額試算」「加給年金額と振替加算」を2026年7月28日に確認して作成しています。

次にすること

繰下げを決める前に、次の順番で確認してください。

  • ねんきん定期便またはねんきんネットで65歳時点の見込額を確認する
  • 65歳・70歳・75歳など複数の受給開始年齢で試算する
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に受け取る案も比較する
  • 加給年金・振替加算、在職老齢年金、遺族・障害年金、企業年金の有無を整理する
  • 税金、医療・介護保険料、年金生活者支援給付金への影響を確認する
  • 受給を始めたい時期の前に、日本年金機構や共済組合等へ請求方法を確認する

60歳時点で国民年金の納付月数が480月未満なら、繰下げとは別に65歳未満までの任意加入で老齢基礎年金額を増やせる場合があります。また、低所得の基礎年金受給者は年金生活者支援給付金への影響も確認してください。

国民年金の任意加入手続きを確認する60歳以上65歳未満で国民年金の納付月数が480月未満の場合の手続きを確認できます。年金生活者支援給付金を確認する繰下げによって影響する場合がある年金生活者支援給付金の対象条件と請求方法を確認できます。基礎年金番号通知書の確認・再発行方法を見る年金事務所への相談や手続きで使う基礎年金番号の確認書類が見当たらない場合に確認してください。