給与所得者の特定支出控除は、仕事のために自分で負担した一定の費用について、年間合計が給与所得控除額の2分の1を超えるとき、超えた部分を確定申告で給与所得から追加で差し引ける制度です。通勤費や資格取得費などであっても、自動的に対象になるわけではなく、職務への直接の必要性と勤務先等の証明が必要です。

特定支出控除の計算方法

控除できるのは、対象となる特定支出の年間合計額そのものではなく、給与所得控除額の2分の1を超えた部分です。給与所得控除額は給与収入に応じて決まるため、同じ支出額でも控除できる金額は人によって異なります。

特定支出控除額の基本的な計算です。
計算項目計算方法
判定基準額その年分の給与所得控除額×2分の1
特定支出控除額対象となる特定支出の合計額-判定基準額。0円以下なら適用はありません。
特定支出控除適用後の給与所得給与収入-給与所得控除額-特定支出控除額

対象になる特定支出は7種類

対象になり得る支出と主な範囲を整理します。いずれも職務遂行に直接必要であることなどの証明が前提です。
種類対象になり得る支出
通勤費一般の通勤者として通常必要と認められる通勤のための支出
職務上の旅費勤務場所を離れて職務を行うための旅行に通常必要な支出
転居費転勤に伴う転居のために通常必要と認められる支出
研修費職務に直接必要な技術・知識を得るための研修費用
資格取得費職務に直接必要な資格を取得するための支出
帰宅旅費単身赴任等で勤務地・居所と自宅の間を移動するために通常必要な支出
勤務必要経費職務に関連する図書費、勤務場所で必要な衣服費、職務上の関係者への交際費等

対象外になりやすい支出

仕事に関連して見えても、次のような支出は対象外になるか、対象額から除外されます。

  • 対象となる7種類に当てはまらない一般的な生活費・私的支出
  • 職務遂行に直接必要であることについて勤務先等の証明を受けられない支出
  • 勤務先から補てんされた部分のうち、その補てん額に所得税が課税されていない部分
  • 教育訓練給付金など、対象となる給付金が支給される部分
  • 勤務必要経費のうち、図書費・衣服費・交際費等を合計して65万円を超える部分

自分で支払ったという事実だけでは足りません。支出の目的、職務との関係、勤務先等の証明、補てんの有無、領収書等を一つずつ確認してください。

証明は勤務先または対象となるキャリアコンサルタントへ依頼する

証明を依頼できる相手と対象範囲は同じではありません。
証明者対象範囲
給与等の支払者通勤費、職務上の旅費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費について、職務遂行への直接の必要性などを証明します。
キャリアコンサルタント令和5年分以後、厚生労働大臣指定の教育訓練給付指定講座に係る研修費・資格取得費について、一定の場合に勤務先の証明に代えて利用できます。

確定申告で必要になる主な書類

申告前に準備する主な資料です。実際の添付・提示・送信方法は申告する年分の国税庁案内で確認します。

  • 給与所得者の特定支出に関する明細書
  • 給与等の支払者または対象となるキャリアコンサルタントの証明書
  • 支出の事実と支払金額を証明する領収書、振込記録など
  • 帰宅旅費などで必要となる場合の搭乗・乗車・乗船に関する証明書
  • 給与収入と給与所得控除額を確認できる源泉徴収票等
  • 勤務先からの補てん額や教育訓練給付金等の支給額を確認できる資料

特定支出控除を申告する手順

申告する年分の給与収入と給与所得控除額を確認し、その2分の1に当たる判定基準額を計算します。給与が複数ある場合は、対象年分の国税庁案内に従って給与収入を確認します。

自分で負担した仕事関係費用を7種類に分け、勤務先から非課税で補てんされた部分や、教育訓練給付金等が支給される部分を除きます。

各支出が職務遂行に直接必要であることについて、給与等の支払者から証明を受けます。対象となる研修費・資格取得費は、キャリアコンサルタントによる証明を利用できるか確認します。

特定支出に関する明細書を作成し、証明書、領収書等、必要な交通機関の証明を整理します。特定支出の合計が判定基準額以下なら、特定支出控除額はありません。

対象年分の確定申告書へ特定支出の合計額などを記載し、必要書類とともにe-Taxまたは所轄税務署へ提出します。提出方法と期限は、確定申告義務や還付申告の扱いを含めて対象年分の案内で確認します。

よくある質問

特定支出控除は年末調整で受けられますか?

受けられません。給与等の支払者などから証明を受け、明細書と支出を証明する資料を準備して、確定申告を行います。

特定支出は全部で65万円までですか?

違います。65万円の上限は、勤務必要経費に含まれる図書費・衣服費・交際費等の合計に適用されます。通勤費、研修費、資格取得費などを含む特定支出全体の上限ではありません。

資格取得費などを申告すると支払額がそのまま戻りますか?

戻りません。対象となる特定支出の合計から給与所得控除額の2分の1を引いた超過分が給与所得から差し引かれ、所得税を再計算した結果として還付または納付額が決まります。

領収書があれば勤務先の証明がなくても申告できますか?

原則としてできません。領収書等による支出事実・金額の証明に加え、職務遂行に直接必要な支出であることなどについて給与等の支払者、または対象となる場合のキャリアコンサルタントの証明が必要です。

公式情報と確認日

この記事は2026年7月29日時点で、国税庁の特定支出控除・給与所得控除と、厚生労働省のキャリアコンサルタントによる証明制度を確認しています。税制、給与所得控除額、申告様式、添付方法は変更される場合があるため、実際に申告する年分の公式案内を確認してください。

次にすること

申告の可否を判断するための確認順です。

  • 対象年分の給与所得控除額を確認した
  • 自分で負担した支出を7種類に分けた
  • 勤務先からの非課税補てん額や給付金を除いた
  • 特定支出合計が給与所得控除額の2分の1を超えるか計算した
  • 勤務先等へ証明を依頼できるか確認した
  • 明細書、証明書、領収書等をそろえて確定申告の準備をした
国税庁の確定申告書等作成コーナーを開く国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って申告書や必要な明細書を作成できます。年末調整と確定申告の違いを確認する会社員が年末調整後も確定申告をするケースを確認します。所得控除と税額控除の違いを確認する控除額が税額や還付額へどう影響するかを確認します。